リハビリテーション新聞: 満足な生活とは何ですか?

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満足な生活とは何ですか?



協同企画:の記事 25.1.23


片麻痺の女性の利用者と交わした言葉がある。

『利用者に役割をもたらせるようにと、僕たちはよく言われる。それがセラピストの本領だと、言い聞かせられる。けれども、僕は利用者に役割をもたらせる術について無知なのです。だから教えてくれませんか…』

『そうね。私も難しい話しはよく分からないけれど、貴方の気持ちは理解するわ。だけど、こんな身体で、人の役に立つなんて考えたことはないわよ。むしろ人に助けられている身でしょ。自分自身が満足な生活を歩めないのに、人のためだなんて…』

満足な生活とは何ですか?できれば貴女の考えを聴きたいのですが。自分にはそれがよく分からないので…』

『昔は編み物もやったし、料理だって好きだったのよ。好きなことに打ち込めることが、満足な生活じゃないかしら。だけどこんな身体じゃ諦める他にないじゃない。片方の手がまったく動かないのよ…』
『編み物と調理ができること。それが貴女にとっての満足な生活なんですね。やってみませんか?

『それが出来るなら嬉しいけれど、こんな身体じゃ無理でしょ?

『それが無理じゃないみたいなんですよ。インターネットで片麻痺の利用者が調理している動画を見たことがあるし、編み物だってみたいです。道具は必要みたいですけれどね。』

『本当に!?それならぜひ、私もやってみたいわ!』

『本来の貴女の想いを、閉じ込めるのではなくて、表現するということ。貴女が声を上げることで、セラピストが成長して、片麻痺でも楽しめる編み物や調理の道具も増えていく。そうすれば、自分の生活が豊かになるだけではなくて、同じ想いを抱えている人の生活が豊かになるよね…』

『確かにそうね。それが私の役割ってことかしら?』

『役割だなんて難しいことは僕には分からないけれど、貴女が自らの満足を追求して、セラピストに仕事を依頼するならば、他の利用者の人生も豊かになる。これは事実だろうね…』

『そうね。分かったわ!』
その日から確かに、彼女の人生が変わったんだ。




<皆さまとの意見交換>


@sakurasakukikki  語りを引き出す、語りを聴くことって、大事ですよね。これをせずに、勝手に問題点や課題を作って、なんの目的もない“リハビリ”を漫然と行ってしまう現状があります。
@yuumatan 目的のないリハビリをするセラピストは、利用者にとってよろしくないばかりではなくて、結局のところ、自分の成長に無頓着なんですね。
izumiz  ツイートを拝読すると、頭でっかちに考えこんでいることがスコンと抜けて、本質に立ち戻れます。いつもありがとうございます(*_ _)
@yuumatan  ありがたい言葉!励みになります。人生はあっという間に過ぎて行きます。無駄なことに悩んでるゆとりはないですね(笑)

@Aさん リハビリテーションのことを再確認できましたし,感動しました.ありがとうございます.
@yuumatan 共に育ち、共に築き、共に悩むということ。上江洲さんの仲間には素敵なキーワードがありますね。『共創』…人間が真に社会的な存在であるならば、『独り』で生きる強さよりも、周囲との共創において、『ひとつ』として生きる豊かさを選択したいですね。 

@Bさん 「役割」って本人や他人が自覚*意識しているものと、本人も他人も意識していない「役割」ってあるよねー。「役割」を抽出するって難しい…時間をかけて評価しないとなかなか出てこない場合が多くて。特に入所の方。利用者という存在がなければ、セラピストの価値もまたない。支援者の価値は対象者がいるからこそ光るんだよね。どれだけの技術や技能も、対象者がいなければ無意味な鉄屑にすぎない。
 
@yuumatan まどろっこしい言い方かもしれないけれど、セラピストを輝かせる存在として、利用者はすでに役割を担ってくれているんだね。もちろんそれについて利用者は自覚していない。だから、まず初めに行うべきことは、利用者にいかなる役割を創出しようかと考えるよりも先に、利用者がすでに成し遂げている役割を精査して、それを表現しながら、利用者が自覚できるように伝えるということなんだ。そのためには、少なくとも私にとって、貴方の存在に意味があると伝えることが重要なんだ。そして次には、その意味についての根拠を付け加えていく。自分が成長するためには、貴方という存在が不可欠だということ。貴方の存在なくしては、自分の成長もないということを、ゆっくりと語りかけていく。それが溶け合ってきたら、次には発展させる必要がある。『自分が成長するためには、課題が必要なのです。そして自分にとっての有益な課題とは、貴方の生活を豊かにすることなのです。だから教えてください。私が何を成し遂げるべきかについて、貴方が私に教えてください…』それが利用者とセラピストの間に流れる自然な関係性なんだ。