リハビリテーション新聞: 病棟生活ではできているんです!

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病棟生活ではできているんです!





「トイレはひとりでできます!」、「ご家族の介助があれば座ってシャワー浴ができます!」 自宅退院前のAさんの担当理学療法士が言った。ケアマネージャーはこれを鵜呑みにしてケアプランをたてた。




しかし、Aさんのケアプランは根本からひっくりかえってしまった。あげく引越しをした。なぜか?ここには罠がある。そんな話しをする。数年前におきた私の失敗談だ。


Aさんの家。実は、ものすごく狭いユニットバス。シャワーチェアーをおく場所などなかった。そもそも、バスタブの淵に座ってシャワー浴をしていて滑ったのが受傷機転だ。私は「ならば、デイサービスで入浴しよう!」と言った。


Aさんの家。実は、トイレ便座が壊れている。一度座ったら、お尻がハマって抜けだけない。バスタブの淵に手を置き、中腰で排泄していたのだという。そもそも、ユニットバスの入口に10cmの段差があり、移動が不可能だった。私は「ならばポータブルトイレで行こう!」と言った。


次はベッドを確認。高さ20cmの低くて細長い折りたたみ式ベッドだった。Aさんは、こんな低い場所に座れないし、立ち上がることもできない。私は「ならば介護用のベッドでいこう!」と言った。


Aさんの家は、広さ20平米のワンルーム。介護用ベッドにポータブルトイレ。さらには車椅子。これらの介護用品はどうやってもはいらなかった。しかも、同居人がいる。もうめちゃくちゃだ。いままで、私が提案した小手先案はすべて廃案となった。


この例えで重要なことは、現場を知らぬ者が、机上の空論で"手段"を指定しても、すぐにポシャるということだ。あげくポシャったらその問題解決はそのまま流れることが多い。そんな苦い経験を何度もしてきた。


だから、回復期のセラピストは、退院後の生活を明確に定義したうえでリハビリテーションをすすめるべきだ。何を根拠に「トイレはひとりでできます!」、「ご家族の介助があれば座ってシャワー浴ができます!」などと言えたのか。ここではお得意の言い訳が出る。「病棟生活ではできています。」


病棟生活を良くすることが仕事なのか。家に帰ってからなんの役にも立たないことを毎日練習するのか。退院前になって住宅環境を知り、無理やり軌道修正するのか。しかもその修正手段が安易に代償を選択することなのか。本当にこれでいいのか。自分の胸に聞いてみるといい。


以上、病棟生活のFIM点数をあげるよりも、自宅でのトイレ動作を自立させるほうが価値がある。でした。

平成2571



<皆さまとの意見交換>



@aitataitachan退所前訪問に行っててもこうなってしまうんですかね。。。 これから僕も気をつけたいと思います。