リハビリテーション新聞: 理学療法士の売り物とは

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理学療法士の売り物とは



「君が回復期の患者にやっている機能訓練は無意味だよ。君の理学療法はニセモノだ」 こんなことを言われたときには腹が立つことだろう。「オマエに何が分かる! 部分をみて無責任に批判してくるな!」とお怒りを受けそうだ。ハイハイ。残念だけど、事実なんだ。





よくありがちなのが、「獲得した機能で退院後の生活をする」という間違いだ。こんなバカげた考えは早々に捨てた方が良い。本当に持つべき考えは「退院後の生活をするために機能を獲得する」というものだ。


考えてごらんよ。なんとなく集めた材料で、家を建てるかい? こんなことを強要されたら、無理に設計図をかいてチグハグな家になってしまう。とても残念なことだ。本当に素晴らしい家は、“設計図ありき”で、材料を集めて建てる。


そう。必要になるものは“最初の設計図=目標設定”だ。さきほど述べたように、素材を集めた後に、設計図を書いているようでは遅い。遅すぎる。でも、ほとんどの理学療法士がこの罠にハマってしまっている。そんなことはない?目標を設定しているって?それは往々にしてニセモノだ。


退院後の生活を、きちんと“定義”しているだろうか。どんな姿勢で食事をするのか。どんなイスに座るのか。どんな姿勢で洗体をするのか。どんな寝具なのか。どうやって買い物にいくのか。どうやって服薬管理をするのか。どうやって玄関先の階段を上るのか等。


患者の生活を知るほど、「歩行改善」や「病棟ADL改善」という目標の、不適切さに気が付くことだろう。これはニセモノの設計図であり、的外れな理学療法を提供するワナだ。ホンモノの設計図は、「明確な退院後の生活を獲得する」ことだ。この設計図をかくためには、評価が必要になる。


スポーツ選手の生活とは違って、高齢者・障害者の生活は、非常に個性的だ。対象者の生活目標=設計図をかくのには、とにかく最初が肝心だ。1時間程度かけて、じっくりと本質的なことを評価しなければならない。これをめんどくさがっていたり、上司からやらせてらえないなら大問題だ。


設計図がなければ、チームリハビリテーションのやりようがない。患者が訓練室でできることが病棟ではできないままとなってしまう。また、患者の病棟ADLが良くなっても自宅生活が成り立たない。そして在宅復帰を支援すべき老健は、特養化してしまう。


正しい回復期の介入プロセスは、「まずは生活評価、最良の生活設計。直後にサービスの手配。これらを目指して機能改善。達成度が低ければ下方修正」だ。ニセモノは「機能をできる限り改善して、頭打ちになったら生活を評価」する。いや。ひどい理学療法士は、生活なんて眼中にない。


以上、理学療法士の売り物は、機能改善による生活獲得ではない。生活のための機能改善だ。」でした。



平成25年8月21日



<皆さまとの意見交換>


@minolukun とてもわかりやすく、共感します。  
@flower_samurai  本当に素晴らしいです。まさしくその通り!!「患者は機能を治す為に回復期にきている。」と多くのPTが言葉にしますが、在宅イメージや概念が曖昧で、背景がなさ過ぎる人が大半3年目になった輩でも未だに生活設計を考えられない。所謂「講習会マニア/オタク」も多過ぎます。