リハビリテーション新聞: リハビリテーションでは牛小屋に注目しよう

ページ

リハビリテーションでは牛小屋に注目しよう




私が、リハビリテーション新聞で繰り返し情報発信していることは、「主体性・課題・環境」といったものだ。ただ、これを説明するのには難渋している。そこに救世主が現れた。そう。あまりにもシンプルかつ的確に説明している人物がいるのだ。

その人は、神戸学院大学 総合リハビリテーション学部の、備酒(びしゅ)准教授 <2010年時点> だ。以下に紹介させてもらう。

--------- ここより引用  引用元 (神戸学院大学HP) ---------
一般的にリハビリテーションの役割は、老化やけがなどで低下した身体機能を回復、また日常動作の能力を維持することにあるとされている。

ところが、備酒准教授からは「リハビリテーションというと体に注目しがちだけれど、動こうという気持ちも同じくらい大切なんですよ」と、少し意外な言葉が返ってきた。意味を問うと准教授は一つのエピソードを紹介してくれた。

兵庫県の北部地域で仕事をしていたときの話です。80歳で脳卒中を患ったⅠさんには左半身に麻痺がありました。歩けるほどの身体能力はあったのですが、それでもⅠさんは起きあがりません。ケアスタッフは焦りました。そこで開かれたカンファレンスで、60年にわたって牛の繁殖を続けたⅠさんを「牛小屋に誘ってみよう」というアイデアが出てきました。これには誰も異論はありません。様々な用意をした上で、Ⅰさんを牛小屋に誘う日がやってきました。「Ⅰさん、牛小屋へ行ってみませんか」、この言葉に、Ⅰさんはベッドに自ら起き上がりました。車いすで牛小屋にたどり着いたⅠさんは立ち上がりました。6ヶ月間ただ寝ていたⅠさんが、麻痺のある手で牛の頭を撫でています。この日を境にⅠさんの生活は一変し、どんどん元気になっていきました。

備酒准教授はこのとき、人は〈動けるから動く〉のではなく、〈動きたいという思うから動く〉のだということをⅠさんに教えられたという。

ここにリハビリテーションの本質がある。「人の価値は身体機能の優劣だけではかれるものではありません。リハビリテーションや介護を考えるとき、できないことや危険なことを探すばかりではなく、その人にとっての“牛小屋”を探して、その“牛小屋”を実現すること。それもわれわれ“リハビリ屋”の仕事であることを忘れてはなりません。イソップ童話の『北風と太陽』のお話にたとえるなら、ポカポカしたお日様のような“支え”ができるリハビリテーションや介護を実現したいものです」と話した。
--------- ここまで引用 ---------

上記の内容には感動した。本当に簡にして要を得ている。感動しすぎた。備酒先生は、患者の主体性を引き出すのが上手だ。備酒先生は、患者の成長につながる課題や環境を提供するのが上手だ。そして、私が、何十もの記事をまたいで、まわりくどく説明していることを一言で表現している。



「その人にとっての“牛小屋”を探して、その“牛小屋”を実現する」 理想的なリハビリテーション・介護の本質は、ここに凝縮されている。


他のリハビリテーション新聞の記事は ”牛小屋”を引き出す方法や、なんでもないことを”牛小屋”にしてしまう方法について記載している。興味のある方は、目を通して頂きたい。

H25年11月9日