リハビリテーション新聞: 連携プレーができない専門職・スペシャリスト

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連携プレーができない専門職・スペシャリスト



医療・介護業界の皆さま。業界は、ますます分業化が進み、多くのスペシャリストが誕生しています。 多くの専門家が、患者・利用者を囲みます。 そこで重要になるのが、他職種連携・地域連携です。 地域包括ケアにおいても、連携が核となります。 ちゃんと連携できていますか? 下の話しを読んでみてください。感じたことがありましたら、ぜひ、活かしてください。


 

82歳女性Aさんは、5年前、夫に先立たれた。ここ最近、要支援1の判定をうけた。ひとり息子は、就職と同時に県外にいってしまい、仕事と育児に忙しく、めったに顔を見せない。


それでも、Aさんは、たくましく生きていた。畑仕事や友人との交流を楽しむ生活に満足していた。ある晩、Aさんが、寝室からトイレまで歩いていると、足元のマットに滑って、尻もちをついてしまった。


床に這いつくばって、立たち上がろうとしたが、そのまま動けない。それから2日間、誰にも気が付かれなかった。糞尿は、床に垂れ流しとなった。


電話に出ないことを不思議に思ったのは、Aさんの長男だった。長男が、Aさんの住む借家の大家に安否確認を依頼した。これが功を奏し、ようやく発見。すぐに、救急車で病院に搬送されて、医師の診察により「右大腿骨骨折」の診断をされた。


Aさんは、医師より、手術を勧められた。Aさんは「息子に相談する」と答えた。Aさんは、天井をみながら長男を待った。すると 「こんにちは!」と若いリハビリテーション職がやってきた。そして、有無を言わさず、「寝たきり予防をしましょう」Aさんの身体を勝手に触り始めた。Aさんは痛みを感じたが、拒否をすることはできなかった。


長男が、Aさんのもとに駆け付けたのは3日後の日曜日だった。長男は、若い医師から声をかけられた。「これは、主治医から預かった、手術同意書です。注意事項を熟読して、ここに署名をください。手術室が空いていないため、骨を固定する手術は5日後です」 。


Aさんは、手術を待つ間、あしを引っ張られながら、ベッドですごした。あいかわらず若いリハビリテーション職は、おかまいなく介入してくる。拒否しても、うんちくを垂れられてよくわからないため、逃げ場がなかった。 


ある時は、便意を催し、ナースコールをおしても、なかなか介助者が来ない。差し込み便器でトイレをするように指示されているのに、介助者がこないのだ。 3分後に、我慢できずにベッド上で漏らしてしまった。 すると職員から 「もう!なんではやくナースコール押さないの!早めにおさないとだめよ!!」 と高圧的な態度をとられてしまった。 Aさんは、汚染されたシーツをみながら、「申し訳ございません」と言った。


そして、ようやく手術をした。その後は、積極的なリハビリテーションがはじまった。リハビリテーションが功を奏したのか、Aさんの痛みが取れ始めた。そして、手が足に届くようになった。しかし、靴下や足を洗うときには、介護士が手伝っていた。


その10日後、一本杖で歩けるまでになった。それなのに、トイレに行くときには、ナースコールを押して、歩行器でいっていた。 さらに2週間後には、杖なしで歩けるようになった。


院長が、病棟の看護師長に、「診療報酬の高い新しい患者を入れる為に、だれかを退院させなさい」と指示をした。 看護師長は、Aさんに 「退院しましょう」 と声をかけた。 Aさんは、言われるがまま、自宅に戻った。


退院日まで歩行器を使い続け、お風呂は介護をしてもらっている状況で退院したのだ。そして、退院5日後、玄関先の階段で転倒。再骨折をしてしまった。


調べてみると、Aさんは、退院後に、浴室や玄関で何度も転倒したことが判明した。それを知ったリハビリテーション職は、「家の玄関先に階段があることなんて、教えてくれませんでした。介護士さんは、介護過多じゃないかな。私が見ている時には、杖なしで歩けるくらい、元気なんですよ」 と、「過剰介護」による弊害を指摘している。


そして、介護士の言い分はこうだ。「私たちは言われたようにやってきたのです」。


Aさんのケアマネージャー(介護サービスを組む担当者)は、「Aさんには、何かあったら連絡するように言っていたのですが・・・。入院していたことを知りませんでした。いつ退院したのか知りません。病院は、連絡をくれないと、困ります」  とむしろ 「迷惑顔」を隠さなかった。 
 

リハビリテーション職、介護職、ケアマネージャー。この3人は、非常に勉強熱心なことで有名な人物だ。趣味は、勉強会の参加や自己啓発というほどである。そして、その3人には共通点があった。「自分には専門性がある」と思い込んでいる所だ。



 今回の茶番は、次のように総括できる。
「自称専門家が、患者によってたかってサービスを提供したが、患者の生活は改善しなかった。よくわからないまま入院期間をすごし、よくわからないまま自宅退院をした。そして転倒・再骨折。起こるべきして起きた事故。今後は、患者の生活を支援する連携・チームづくりが必要になる」


ところが、肝心のリハビリテーション職、介護職、ケアマネージャーは、この総括を思いつかない。それどころか、再入院したAさんに「無理しちゃだめだよ。またがんばろう」「大変でしたね」「次は連絡くださいよ。もう歳なんですから、頼って下さいよ」 と大まじめで言い聞かせている。


怪我をした当事者である Aさんのほうが 「申し訳ございません」 と謝るほどだ。こうした「専門職がバラバラで介護する」ことを繰り返すことで、元気だった利用者は、「寝たきり一直線」に陥ってしまう。いったい、誰の為のサービスなのだろうか。


主役であるはずのAさんは、置き去りのまま話が進んでいく。チーム医療で作るべきものは、Aさんの退院後の生活だけだ。Aさんは「それができない現場」とは縁を切るべきだった。もっとも、誰かがそのことをAさんに教えない限り、Aさんは、専門家の大先生たちに従うしかない。


実にくだらない茶番である。しかし、介護界はこの繰り返しで、なりたってしまう。それどころか、繰り返すほど、繁盛してしまうのだ。そのカラクリは、医療保険・介護保険というビッグマネーが、湯水の如く、注ぎ込まれているためである。


平成27年2月21日
Masaki Kimura