リハビリテーション新聞: バカタレ! 利用者にとってのプランではなくて、君だったら何が出来るだろうという君自身の計画立案になってる

ページ

バカタレ! 利用者にとってのプランではなくて、君だったら何が出来るだろうという君自身の計画立案になってる




『先日に叱られた意味が、やっと分かりました。』と、スタッフが駆け寄って来る。叱った覚えなどないのだけれど、取り敢えず彼の言葉に耳を傾ける。それは彼が、介護計画書の目標設定に悩んでいた時のことらしい。


日常に良好な刺激をもたらすために、利用者が愛した将棋の実践を、生活に組み入れたい。けれども、現実問題として、自分が将棋の相手をするには、業務上のゆとりがない。それでは企画倒れになってしまう。


他の利用者との実践を検討してみるも、彼は認知症を抱えているために、将棋のルールを誤るかもしれない。それではトラブルの元になり、かえってその人の自信を喪失させるかもしれない。


やはり将棋の実践は難しいかもしれない。自分でも対応できる別の趣味はないだろうか?忙しい業務の隙間を見つけて、自分は彼のために何ができるのだろう?生真面目な彼が、悶々とした感情に向き合っている最中に、僕が突然に現れて、『このバカタレ!』と叫んだらしい。


『計画立案というのは、利用者の必要性から生じるのであって、君の都合なんて関係ないんだ。君の頭の中は、利用者にとってのプランではなくて、君だったら何が出来るだろうという君自身の計画立案になってるんだ。物事の順序を履き違えるな!このバカタレ!』 と、散々な言葉を吐き捨てて去ったらしい。


彼はそこから考えを改めて、利用者にとっての資源を見つめ直した。自分は彼にとって、あくまでひとつの資源に過ぎない。そこで彼は家族に電話して、その人にとって重要な作業を取り戻すために、次の面会で将棋の相手になって欲しいと依頼した。家族は快く引き受けてくれて、将棋の親子対決が始まった。


『父は将棋の駒を並べることはできましたが、そこからの動かし方は忘れているようです。けれども、試行錯誤しながら戦略を練ろうとする眼差しは、威厳に満ちたかつての父のようでした。これからも機会のある度に、父との将棋を楽しみたいと思います!』家族のその言葉に、思わず熱い感情が込み上げる。


彼の報告を聴いて嬉しかったのは勿論のことだが、おそらく虫の居所が悪かっただけであろう僕の難癖を、そこまで肯定的に解釈する彼の器に驚きもし、申し訳なさが溢れてきた。君は僕よりも器が大きい。これからは君に付いて行きますという言葉を呑み込んで、分かればよろしいと放って逃げてきた(笑)


平成27年3月1日
寄稿者  @HarumaDream 


管理人 編集後記  その通り! 「利用者になにかしてあげなきゃ!!」 「なにか役に立つことしなきゃ!」 これって間違いのもと。 新人や中途採用の痛い子ちゃんがやらかす失敗。 基本的には、喫緊の問題でもない限り、利用者に対して仕事をつくりに行ってはだめ。 貴方の仕事をつくるためだけのひとりよがりな問題提起はいらない。 離れるように離れるように関わるべき。 部下を突き放した雨澤さんの指導は、素晴らしすぎます。