リハビリテーション新聞: 仕事を振ってもらったとき ”的外れな論点” で対応していませんか?

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仕事を振ってもらったとき ”的外れな論点” で対応していませんか?



五月下旬。新人職員の皆さまは、”五月病” を乗り越えられたでしょうか。 とりあえず、仕事に慣れ、ひと段落ついた頃かと思います。それと同時に、”解決を迫られる案件” を、抱え始める頃かとも思います。


さて。新人の皆さま。利用者や他職種から、”なにかしらの相談”が、あったとき、どのような対応をしますか? 先輩から、仕事を振ってもらったとき、どのような対応をしますか? ”的外れな論点” で対応していませんか?  今回は、そのような話をしたいと思います。




では始めます。



<設定>

79歳女性。右大腿骨頚部骨折。人工骨頭置換術後から1週間経過。全荷重許可。片脚立位保持時間(右)痛みのため不可(左)1秒。ベッド上でオムツを使用している。トイレへの移動(居室から20m)を希望しているが、左手関節の痛みがあり、松葉杖歩行ができない。 


<課題>

「居室からトイレへの移動手段を定めてもらっていいですか?」



さぁ。どうしましょう。まず、何と言いますか?






①オムツはやめて、車いすでトイレにいくのはどうでしょうか。

左手関節を尺屈したまま松葉杖を使ってるから痛いんじゃないかな?
③あの人は骨盤底筋が働きにくいから難しいんですよね。。。
歩行器でいけばいいじゃないですか。
認知行動療法をすればいいのに。





残念ですが、全て的外れです。それどころか、質問に対する答えにもなっていません。



 「居室からトイレへの移動手段を定めてもらっていいですか?」



と聞かれたのであれば、 



「はい」  もしくは  「いいえ」



と返すべきでしょう。



まず、多くの方が、このような基本的なことが、できていません。 他人事であるかのような返答や、能書きを垂れて終わってしまうようでは、話しになりません。





次に、論点です。



「居室からトイレへの移動手段を定めてもらっていいですか?」



求めている返事は。 「はい。評価をして、現場と調整します」 であり。求めている行動・論点としては、 居室からトイレへの移動手段を、関係する職員で共有すること」 つまり。すべきことは3つ。①評価、②現場との合意形成、③モニタリングです。 順に述べます。



①評価

 ベッドからトイレ動作までの一連の動作(起居、座位、靴、起立、立位、移動、トイレ動作)を評価しましょう。 どこが難しいのでしょうか。どのように環境因子を設定すれば、容易になるのでしょうか。 移動は松葉杖でしょうか? 歩行器でしょうか?歩行車でしょうか? どこのトイレを使えばいいでしょうか? 手すりは必要でしょうか? 介助者の介入はどの程度期待できるでしょうか? 今後の機能改善・生活改善の見通しはどうでしょうか?


②現場との合意形成

 例ですが、①評価の結果、”歩行車の両肘支持での移動” との、結論を出しました。 この方法であれば、左手関節の痛み無く、居室からトイレまで移動ができます。 今後、屋外杖歩行をして片道500mの距離を買い物にいくための、足がかりにもなります。 ただし、現状は、起立直後や、歩行時に後方への転倒が予測さる状況です。この場合、現場には、次のような声掛けが必要になります。


「2~3日間は、見守り介助で、様子をみて欲しいです。後方への転倒が心配なのです。もし、問題がないようであれば、自立にします。また、相談させて下さい」 



ここまでして、ようやく、トイレまでの移動手段が確保されます。 チームリハビリテーションとなります。



もしも、現場に伝えることが 「歩行器でいいと思います」 だけであったら、別の職員が本件の調整をしなければなりません。これは、無責任なことです。 現場から不満が爆発するのは時間の問題です。



③モニタリング

今回の例では、歩行車でトイレにいくことになりました。 しかし、次の日、現場に出向き、情報収集をすると、「寝起きのトイレ移動時に、後方へ転倒しかけて介助をした」 とのことです。 環境設定や見通しが甘かったのです。 すぐに修正をしましょう。


どのように修正しますか。



オムツにもどしますか? 車いすに変更しますか?



いいえ。それは第一選択ではありません。 歩行車の環境因子の調整が第一選択になる場合が多いです。



例えば、 後方不安定の原因は、「歩行車の肘支持の位置が高すぎたことが問題」 との仮説を建てます。 そこで、歩行車を5cm低くして、検証するのです。 上手くいけば
、予定通り、2~3日の見守りの期間を通して、自立のための判断材料があつまることでしょう。


ここで、ようやく、今回の案件 「居室からトイレへの移動手段を定めてもらっていいですか?」 が、解決となります。 しかし、これで終わりではありません。この先も、①評価、②合意形成、③モニタリングを反復して、退院後の生活目標に向かってADL拡大をはかることになります。



これは一例です。何か、新しいシステムを導入したとき、なにかしら問題がおこります。 システムを導入しっぱなしで、その後、放置するようでは、問題が生じ続けます。 貴方に相談すればするほど、問題が増え続けます。事故が起こります。 それでは残念ですね。




新人職員の皆さまが、職場に慣れはじめた頃。  
”解決を迫られる案件” を、抱え始める頃。 

合意形成・問題解決手段(ソリューション)を提供できる人になるか。


中途半端にかかわり、問題をややこしくする人になるか。


的外れな能書きを垂れる、使えない人になるか。 



先輩達は、期待しながら、軌道修正をおこなっていることでしょう。


平成27年5月21日
筆者 Masaki   Kimura