リハビリテーション新聞: 良い退院支援ってなにかな。じゃあ、成功した退院支援と、失敗した退院支援という切り口から考えていこうよ

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良い退院支援ってなにかな。じゃあ、成功した退院支援と、失敗した退院支援という切り口から考えていこうよ



ある夜の会議室。 私は残業をして、院長と、打ち合わせをしました。 


あるケアマネージャーの組織から、講演依頼を頂いたためです。 内容は、 「医療介護連携・退院支援」 について、ケアマネージャー100名の前での講演 をするというものでした。


打ち合わせが始まって間もなく、院長が口を開きます。  「 良い退院支援って、そもそもなにかな。 とりあえず、成功した退院支援と、失敗した退院支援という切り口から考えていこうよ 」


軽い提案に思えましたが、議論は、かなり深まりました。


退院支援の失敗と成功をわけるものは、なんなのでしょうか?


つまり、

病院からただ、退院できれば、施設入所でも成功なのか?
それとも、ちゃんと、自宅に退院できれば成功なのか?
生活さえ成り立てば介護漬けにしても成功なのか?



このような疑問が次から次に湧いてきたわけです。

 

次に、一見、成功したと思われる退院支援は、実は失敗なのではないか?ということです。


つまり、

自宅に退院できても、介護依存させて役割を奪ってしまっては、失敗ではないか? 
順調に家事復帰しても、ゴミ出し中に再転倒したら、その瞬間に、失敗例になるのではないか?




さらに、退院支援が、失敗と思われても、軌道修正さえできれば、成功なのではないか? という議論にもなりました。


つまり、

自宅退院して廃人だったとしても、2年後に、役割を取り戻せば成功ではないか? 
退院後に成り立たない生活があってもモニタリング体制が準備されており軌道修正できれば成功なのか?



さらには、こんな疑問も・・・


転倒により、骨折して、再入院したら失敗なのに、軽症で自宅生活が継続できるなら失敗にはならないのか。




そうです。 考えるほど、「退院支援の成功の定義」 が曖昧 なことに気が付きました。 いつも退院支援に注力して、専門家だとさえ思っていた自分が恥しくなりました。


質問を重ねるほど、自身の無知に気が付いたのです。 世間では、これをソクラテスの”問答法”だとか、”無知の知”と呼ぶのだそうです。



さぁ、それに気がつけた私は、幸いです。 無知の知を悟った私は、 「退院支援の成功の定義」  を明確にすることは、極めて重要なことだと考えました。なぜなら、「退院支援にできること」 がハッキリするからです。




夜は深まり、会議室での議論は進みます。


 「そもそも、立場により、退院支援の目的が変わるんじゃないかな?  医療は「患者を退院させるため」、 介護は「利用者が生活を営み続けるため」 ということに主眼をおいている。 この違いを踏まえない下手な連携・退院支援では、だめだよね」



そう。そこなのです。 病院側と介護側は、業務そのものが違います。
そのため、医療介護連携・退院支援での不満も異なります。



よくある病院側の言い分はこうです。 

「疾病の治療は終わった。あとは介護業界の仕事」
「せっかくリハビリテーションを頑張ったのに、介護漬けでは残念
「介護漬けにしたら生活が成り立って当然。このケアプランには芸がない
「提案した手すりがついていない、なぜ再調整の連絡をくれないのか。そのせいで、再受傷となった」
「家族は介護に自信満々だったのに、介護疲れで施設入所になった。あのケアマネはだめだ」



よくある介護側の言い分はこうです。

「退院の数日前に、いきなり退院準備を頼まれても困る」
「医療は、治療が終わったら追い出す。生活がみえていない」
「福祉用具の提案をされても、生活がみえていない。不採用になるにきまっている」
「股関節が脱臼しないように注意するように聞いていた。でも玄関の低い上がり框に座ってクツを履いてはいけないことは思いつかなかった。情報が足りない」




夜はさらに、深まり、会議室での議論は終盤をむかえます。
コーヒーを飲みながらの雑談で、その日の結論がでるのです。



「ん~ 医療介護が不満をいいあう連携では、残念だね。患者が報われないよ


「そうですね。お互いが、陰口ばかり。 情報発信すればいいのですが・・・」


「そうそう。気軽に連絡・対話ができる仲って大切だよね」


「はい。退院後は、医療・介護もモニタリング。問題が生じたら、相談しあうべきです」


「ああ、それが、患者に問題が生じたとき、軌道修正するためのシステムなるね。このシステムを利用できる状態で退院することを、退院支援の成功と、表現してもいいんじゃないかな」


「振り返ってみると、法人内・外とわず、 うまくいっている医療と介護は、密に対話していますね。退院支援のためにできることって、そういった関係づくり、コミュティづくりですね。 とにかく対話が大切だと思います」
 

「そうそう。『きいてなかった』 が一度でもあると、お互いが、『もう勝手にやって。知らない ってなっちゃうよね」


「ははは・・・。誰のためのサービスなんでしょうね。患者ですよね」


「我々は弱いね


地域包括ケアシステムなんて、学区レベルで、このシステムを回すんですよね・・・。ハハハ」


そのようなまとめをして、その日の業務は終わりました。

平成27年12月13日
筆者 Masaki Kimura