リハビリテーション新聞: ”すげーPT” になりたい若者の成長戦略とは

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”すげーPT” になりたい若者の成長戦略とは



ある雨の日。 整形外科病院での勉強会のあと。 懇親会で、セラピストが20人。
居酒屋の長いテーブルで2~4人グループが情報交換をしています。



その時の
若い理学療法士さんと、勉強会で講師をした40代のおじさん作業療法士の会話です。




どうすれば、すげーPTになれるんですかね? 



若いPT
「今日の、講演、すごく勉強になりました。 明日から使わせてもらいます! でも、俺、いま、先が見えないんです。 どうすれば、すげーPTになれるんですかね?


おじさんOT
「ごめんね。質問で返すけどさ、君は、どんな戦略をとれば ”すげーPT” になれるとおもうの?」


若いPT
「すきなことに熱中する! 目標を設定して頑張る! いい師匠についていく!」


おじさんOT
「おお。いいんじゃない? なにに熱中してるの?聞かせてほしいな」


若いPT
「え・・・。  ない・・です。 あれもこれも、やってみるんですけど、 先輩たちがすごすぎて、俺にはマネできないんです」


おじさんOT
「ハハハハ!  君は正直だね」



若いPT
「そ。。そうっすか」


おじさんOT
「正直ね。 そんな難しく考えなくていい ともうよ」


若いPT
「へ?」



師匠は患者さん



おじさんOT
「熱中できるものもいらないし、目標もいらない。 師匠は・・・ セラピストではなく、患者さん かな」


若いPT
「え? 先輩はそうなんですか?」



おじさんOT
「うん。熱中していることも、目標もない。 ただ、目の前の患者さんに尽くす のみだよ」


若いPT
「え。そんなんで、すごいPTになれますか? 俺は、必死に医学的知識を学んだり、論文発表をするしかないとおもっているんですけどね」



おじさんOT
「うーん。 勉強のための勉強や、研究のための研究に なりがちな考え だな。それ」


若いPT
「へ?」



おじさんOT
「患者さんの困っていることに向き合い、なにか疑問が生まれたとき。 調べるべきことって沢山あるよね。 それが勉強になるし、その中で、ある傾向に気が付いたり、他のセラピストに知らせるべきものが生まれたとき、学会や勉強会で発表すればいいんじゃないかな」


若いPT
「あ~わかりますよ。 でもそんなこといってたら、10年働いても論文ゼロ・・・ ってことになりかねませんよね?  やっぱ、目標たてたほうがいいんじゃないですかね?」



論文ゼロ



おじさんOT
「論文ゼロ・・・。 いいじゃんそれで」


若いPT
「よくないっすよ!」



おじさんOT
「君はさ、”すげーPT” になりたいって言ってたけど、 それは 論文を書くPTなの?」


若いPT
「そうです。〇〇先輩や、△△教授のようになりたいんです」



おじさんOT
「ハハハ! 君は、大学院関係者に囲まれすぎているね ”すげーPT” 像が 限定的だよ」



若いPT
「そうなんですかねえ」



地に足がついていない



おじさんOT
「ハッキリいうとね、地に足がついていない。  君は、君の職場に一生懸命になりなよ。  ただ、ひたすら、目の前の患者さんを良くしようと一生懸命になりなよ。 そうすれば、10年後に論文ゼロでも、 すぐにでも講師や研究発表ができるセラピストになっているさ」


若いPT
「なるほど・・・ 地に足がついてないですか・・・ 友達にもいわれたことあります・・・」



おじさんOT
「目の前の患者さんに提供する、リハビリテーションの内容は、毎回おなじ? 毎回ちがう?」


若いPT
「うーん。だいたい同じこと提供していますよ。 何回かおなじことをやって、それで、キリがいいときに効果判定します」


おじさんOT
「うーん。いろいろとあるんだろうけど、その辺からして、もったいないよ。 ”すげーPT” になるための機会を逃しすぎてる



若いPT
「どういうことですか?」


すげーPTになるための機会



おじさんOT
「目の前の患者さんの変化に本気になったらね、 なにかを30秒提供したら、それだけでも効果判定できるよ。それが有効なのか無効なのか。すぐにわかる。  なんでかっていうと、 仮説があるから。   『これをこうしたい!こうしてみたらいいんじゃないか! ああ、だめだった! 次はこれだ! お!いい感触だ! 採用 』   って流れ」



若いPT
「そんな、すぐ変化だせないですよw   そんなことできたら、すでにそれが ”すげーPT” なんですけど・・・」



おじさんOT
「いやいや、君にもできるよ。 例えば、立位体前屈ってるでしょ。 立位で膝を伸ばしたまま、手を地面に伸ばすやつ。  このときの指先と地面の距離を、指床間距離(FFD) っていうでしょ。 これは数値で表せるからわかりやすいよ。   目の前の患者さんのFFDが5cm。 これを0cmにしたいとする。 さぁなにする? 」




若いPT
「え。股関節や脊柱にかかわる筋・関節包を伸長します」




おじさんOT
「そそ。 いま考えたことを30秒提供して、効果判定できるでしょ」




若いPT
「たしかに・・・ そうですね・・・」


おじさんOT
「股関節や脊柱にかかわる筋・関節包。 それだけでも、観察すべきことはたくさんあるよ。 ハムストリングスならば、内側なのか外側なのか? 起始部なのか筋腹なのか停止部なのか? 膝関節と股関節、どちらをより多く使って伸長すべきなのか?  皮膚のシワのできかたや、筋膜のうごきはどうなのか? 伸長する時間は? ホットパックにより差はあるか?」


若いPT
「なんすか・・・ そのすさまじい引き出しの量・・・。 俺にはまだ、そんなことまで考えられないです」


おじさんOT
「いや~ これはまだ、1 / 100 しか言っていないよ」


若いPT
「え!まじっすか!?」


おじさんOT
「FFD5cmから0cmをめざして、外側ハムストリングスの内側起始部を重点的にやっても2cmが限界だとするよ。 そこで、腰を後ろからポンポンと強めに叩くだけで、0cmになったりするの。 でも後日は5cmに後戻り。 このとき、考えるべきことは沢山あるよ。 FFDには、足趾、肩甲骨、鎖骨、さらにはアゴの関節も関係してるし、、、 仮説はいくらもあるよ」



若いPT
「気が遠くなるんですけど・・・」



仮説検証の繰り返しで身につく



おじさんOT
「これはね。 仮説検証の繰り返しで、身につく さ。 目の前の患者のFFDがどうやっても目標の0cmにならない。 限界を感じた時が成長するとき。  その時、『ああじゃないか、こうじゃないか』 と、いろいろと推論する。 自分で考えた推論を、自分でためす。 自分で結果をみる。 自分で次の手を考える。 その繰り返しで、どんどん成長できるよ」



若いPT
「なるほど・・・」



評価指標の選択スキル



おじさんOT
「あとさ、そもそも改善すべきものはFFDなのか? ってことも考えなくちゃいけないよ。 勉強会でFFDの改善方法を習って、次の日に、患者さんにそれを提供しているようじゃ、はなしにならない。 FFDは、あくまでも例。 仮説検証の練習ために、例になってもらった、1つの臨床指標にすぎないからね」



若いPT
「耳が痛いです・・・」



おじさんOT
「ハハハ。 若いセラピストさんにはよくあること だよ」



若いPT
「すいません」




おじさんOT
「地に足つけてさ。 目の前の患者さんの変化に一生懸命に なればいいよ。 患者さんは何にこまっているのか? どうやったら解決できるか? どの指標を用いて改善をするか? 短期的な指標は?長期の指標は?  いくつもある仮説のなかから、どれから試すか?    そんなこと考えながらリハビリテーションを提供すれば、2度、同じリハビリテーションを提供することはないよ」



おわりに




整形外科病院での勉強会のあと。懇親会で、セラピストが20人。
居酒屋の長いテーブルで2~4人グループが情報交換をしています。



その時の
若い理学療法士さんと、勉強会で講師をした40代のおじさん作業療法士の会話でした。



示唆に富みますね。



平成28年12月14日
筆者 Masaki Kimura