リハビリテーション新聞: 中学生陸上部のスポーツリハビリテーション ~クツの大切さ~

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中学生陸上部のスポーツリハビリテーション ~クツの大切さ~

画像引用 https://pixabay.com/

ある、男子中学生が、クリニックにやってきた。
男子中学生は、陸上中長距離をやっており、1500mが4分15秒
県大会で2位なのだという。





制服姿の男子中学生が暗い顔でつぶやく


足が痛くて、走れない・・・」



一緒にやってきた、母親・監督が心配そうにみている。
その場に、重い空気が流れる。



さて、理学療法士の出番だ。



理学療法士による全体像の評価




彼は、足の痛みにより、走行困難。そのことが、様々な活動/参加場面を失わせている。それは、競技会への参加や、仲間との語らい、学校での立場などだ。 これらによって、彼の尊厳は不安定な状態にあった。







リハビリテーションしなければならない。






起きている、活動制限や参加制約はわかりやすい。
よくわからないことは ”足の痛み” であり、これを徹底的に調べなければ、先にすすめない状況であった。







評価だ。




理学療法士による問診




ベンチに座って、うつむいている男子中学生に、理学療法士が問う。



理学療法士 「いつからいたいの?」



男子中学生 「半年くらい前からです。ひどくなったのは今週からです」





理学療法士 「どこが痛いの?さわってみて」



男子中学生 「ここです」
         男子中学生は、両足の甲と裏(リスフラン関節~ 足の指の足背と足底)を触った。




理学療法士 「どんな風にいたいの?」





男子中学生 「地面をけれなくなります。痛くなったら、立っているだけでもしんどいです



理学療法士 「ほほう。 いまもしんどいの?」



男子中学生 「いいえ」




理学療法士による評価 症状の再現と動作分析




理学療法士 「いま、歩いてみて、痛みはでるかな



男子中学生 「いいえ。走ると、だめなんです」
             そういって、男子中学生は、ふつうに歩いた。


 
どうやら、負荷をかけなければ、症状は再現されない らしい。
ここまでの除外診断で、理学療法士の考える原因の仮説は2つであった。




1.不調による利益
2.別の場所の機能不全による代償による前足部過負荷。足底腱膜炎など。





そこで、クリニックの外にでて、歩道を20m、走ってもらった
問題がなかった。 制服姿で、ここまでキレイに走れることに、関心した。


 ・股関節はやわらかく、うしろまで伸展している。
 ・股関節の前にある筋肉(腸腰筋など)はしっかりと働き、つま先で蹴り上げは強調されていない。
 ・その他、骨盤や体幹、肩甲骨・腕の動きも悪くなかった。




理学療法士による評価 関節可動域・筋力・姿勢・動作など



念のため、治療台に横になってもらい、ザッと身体を評価。



問題なし。。。




理学療法士は悩んだ。。。


対症処理


結局、原因不明のまま、対症処置(足部のマッサージ)だけ伝えて、終わった。






理学療法士による評価 モニタリング1回目


2日後の夕方。




再び、男子中学生が、クリニックにやってきた。
ランパンにランニングシューズのまま。
泣きながら、やってきた。


男子中学生 「チキショウ。 痛くて、はしれない・・・」
話を聞くと、足部の痛みにより、部活をリタイヤ。そのままクリニックに来たらしい。




理学療法士は、仮説の1つ目。「不調による利益」 を疑った。







その次の瞬間。理学療法士は、男子中学生のランニングシューズに目が行った。






理学療法士による評価 環境因子





男子中学生は、ランニングシューズのクツ紐を、かなり強く縛っていた







この情報が理学療法士の考える原因の仮説の構成要素に加わり、自体は急転する。









理学療法士 「あの。いつも、クツ紐をそんなにつよく縛っているの?」




男子中学生 「はい。自分、つよく縛らないと、靴ズレがおきるんです





理学療法士 「なるほど。もうわかっちゃったかも。 クツ紐つよく縛りすぎだよ。




男子中学生はキョトんとしている。
靴ズレ予防となった一度の成功体験が、男子中学生の常識をゆがませていた





理学療法士による治療 環境因子の改善と再発予防




それから、理学療法士は、以下2点を丁寧に説明した。

1.走っているときの足の動きについて
   足の裏に体重をかけると、足のサイズが前後に約1cm大きくなることを目の前で提示。

2.足の側面。どの部分を手でにぎると、足の指が動かしにくいか。動かしやすいか。
   くるぶしの前方あたりを両側面からにぎると、足の指が動かしやすい。
   しかし、足の指の付け根のあたりを両側面からにぎると、足の指が動かしにくい
   動かしにくい状態で足の指を無理やり動かそうとすると、痛みがでること。
   このことを目の前で提示。




このことをから、やるべきこと2つ。

1.適切なクツを選択すること。
   かかとを合わせて靴を履いてたとき、つまさきに1cmの余裕をもたせること。
   成長期のため、足の成長に敏感になること。

2.適切なクツ紐の結び方をすること。
   くるぶしの近くは、きつめに。 足の指に近いほうはゆるめに。
   一回一回、クツ紐を結びなおすこと。ほどくこと。




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理学療法士による評価 モニタリング2回目




数か月後、男子中学生が、笑顔でクリニックにやってきた。
あれ以来、調子が良いという。


そして、1500mで県大会優勝。
タイムも7秒短縮して、4分08秒。


4分を切れば、全国大会での表彰台が狙えるという。
頑張ってもらいたいものだ。





リハビリテーションの達成




出会った頃の男子中学生は、足の痛みにより、走行困難であった。
そのことが、様々な活動/参加場面を失わせていた。
それは、競技会への参加や、仲間との語らい、学校での立場などだ。
これらによって、彼の尊厳は不安定な状態にあった。




いまの男子中学生は違う。表情も良い。
尊厳のある生活ができている。
「良いリハビリテーションできた」と感じられる場面の1つだ。



平成29年5月7日
筆者 Masaki Kimura