リハビリテーション新聞: なぜ 早合点はセラピストの洞察力を奪うのか

ページ

なぜ 早合点はセラピストの洞察力を奪うのか


画像引用 https://pixabay.com/


おはようございます。平成29年9月11日月曜日。近頃、涼しくなってきましたね。虫たちの活動もずいぶん落着きました。我が家の盆栽たちへの害虫の脅威は、ずいぶんと減っています。



さて、先日、雨上がりに、桜並木をランニングをしていると、強烈な桜の香りがしました。桜もちの、あの香りです。どうして、秋にあの香りがするのか、疑問に思いました。
その時、10年くらい前に、担当の患者さんが言っていたことを思い出しました。




「桜餅の香りは、秋の香りだからね」


これ、実は、早合点エピソードなのです。紹介します。



早合点エピソード1 会話の発展の乏しさ


「桜餅の香りは、秋の香りだからね」

当時は、患者さんがなぜそんなことを言うのか、理解できていませんでした。 「桜餅は春だろ。材料は、①桜の葉の塩漬け、②あんこ、③紅を混ぜたもち米だろ。この人ボケてんのか?見当識障害か?テキトーに返事しておこう」と感じたのです。


そして、今になり、10年前、患者さんの言った「桜餅の香りは、秋の香りだからね」を体験してしまったのです。そこで、私は、なぜ、桜並木をランニングをしていると、強烈な桜の香りがしたのか、調査をしました。すると、ちゃんとした、理屈がありました。




桜の葉は夏にしげる

毛虫などのが桜の葉をたべて糞をする

秋にかけて糞が堆積する

雨あがりなどに、桜の葉の香りがする


こういうことだったのです。




10年前の私は「桜餅の香りは、秋の香りだからね」という患者に対して、「この人ボケてんのか?かわった人だな」と感じていたのですが、ならば、「そうですね。秋の桜の下は、虫の糞がいっぱいで色がかわっていますよね」と返事ができることでしょう。そこから、会話が発展することでしょう。



このような話は結構あります。


早合点エピソード2 回転ずし 価値観の違い



すごくお金持ちの患者さんがいいます。 
回転すしって、お寿司がまわるって知ったとき、すごくびっくりしたよ」

私は
「確かに冷静に考えると異様ですよね」と、適当に返事をするのですが、お金持ちの患者さんからは、斜め上の返事が帰ってきます。


「私は、ビルの屋上の寿司屋で、夜景を360°楽しむため、フロアが回転するところによく行った。今でも、それが本当の回転すしだと思っている」 と言うのです。


いやはや。皆さま、人生経験は様々です。他の皆さまとの会話も、自分の価値観で、物事を考え、返事をしていると、沢山の勘違いを犯してしまいました。



早合点エピソード3 問診のミスリードによる的外れ治療



問診でも言えます。


食事中に転落した患者さんが「イスに座って食事をしていた」と言います。 「ああそうですか」と、スルーしてしまうことが多いですよね。 しかし、実際の生活現場をみると、イスの座面に”3枚重ね”の座布団がありました。 めちゃくちゃ不安定ですよ。しかも、この人、パーキンソン病です。転落して当たり前です。 理由を聞くと、配膳が大変だから、高いキッチンシンクで食事をしたかったとのことでした。



もし、この患者に、「パーキンソン病患者の座位バランスに悪影響をおよぼす身体要因」なんて情報をひっぱりだして、座圧中心・前方リーチの改善や、薬剤調整などに明け暮れていたら、どれだけ、的はずれかおわかりでしょう。


エビデンスもクソもないです。得るべき情報を得られていないので、何をやってもムダです。自分の価値観で、物事を考え、意思決定をしていると、勘違いを犯してしまうのです。


早合点エピソード4 家屋調査のミス ”家屋調査のポイント”とか勉強するよりも大事なことがある




次に、自宅廊下で転倒した患者が「いつもは裸足。正装で靴下をはいていたの滑った」と言います。 「ああそうですか」と、スルーしてしまうことが多ですよね。 実際に、現場を見にいっても普通の廊下でした。 しかし、後になって、猫の毛で足元環境が最悪だったことが判明しました。 見落としてしまったのは、誰かが掃除した後だったからです。



「それならはじめから猫の毛で滑ったといえよ!!!!」とつっこみたくなりますよね。
まぁ、悪いのは私です。 自分の価値観で、物事を考え、意思決定をしていると、勘違いを犯してしまうのです。



早合点がセラピストの洞察力を奪う理由




真相に近づくためにすべきことは、机に向かってお勉強をすることばかりではありません。 患者の主観的な意見、客観的な情報。それを引き出す問診力。そして、仮説検証の反復による地道な推論・対話です。


仕事に慣れてくると、患者の訴えに対して、「ま~たはじまった」「ま~たおかしなこといってる」だとか、まだよく聞かないうちに、もう分かったつもりになることがあります。 
そのせいで、洞察力が奪われてしまうセラピストを多くみてきました。



早合点しなければマンネリ対策になる


現在の仕事にマンネリを感じ始めたら自問します。 
「まてよ?早合点が過ぎるのではないか?」 すると、すべきことが、無限に生まれます。派生します。これらが、結構な確率で、創造的な仕事につながるのです。




早合点により、洞察力が奪われていませんか?
もしよかったら、考えてみてください。





平成29年9月11日
筆者 Masaki Kimura